大腸癌研究会

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大腸癌とは

Q&A

Q1 大腸癌のステージ

ステージIIIの大腸癌といわれました。ステージとは何ですか。

A 「ステージ」は「病期」ともいい,大腸癌の進み具合を表したものです。ステージ分類(進行度分類)には日本の分類(大腸癌取扱い規約)と国際的な TNM 分類があります。どちらのステージでも,大腸癌が大腸の壁のどの位の深さまで進んでいるのか(壁深達度),リンパ節にどの位転移しているか(リンパ節転移),また肝臓や肺などの遠くの臓器に転移しているか(遠隔転移)により決まります。ステージ 0 が最も早期で,ステージ IV が最も進行した状態です。また,大腸癌の治る可能性をステージから予測できるため,今後の治療方針を決めることができます。ステージ III はリンパ節転移があることを示しています。この場合,抗がん剤による補助療法が奨められています。

Q2 大腸癌の内視鏡治療

早期大腸癌だから内視鏡で切り取ることができるといわれました。
お腹を切らなくても良いのでしょうか。

A 早期大腸癌とは,癌が大腸の壁の浅いところ(粘膜下層まで)にとどまっている癌です。最も浅い M 癌(粘膜内癌)とそれより少し深く入っている SM 癌(粘膜下層癌)に分けられます。M 癌は転移しないので,内視鏡により完全に取り切れれば,大腸癌は治ります。また,SM 癌でもリンパ節転移の可能性がなく完全に切除できれば,内視鏡治療で治ります。具体的には,分化度の高い組織型(顕微鏡で見て大腸の粘膜によく似た固まりを作る癌)で,最大径が 2 cm 未満で,粘膜下層への垂直浸潤距離が 1 mm 未満であれば内視鏡治療が行われます。

 ただし,内視鏡で取ってみた結果,深いところまで癌が及んでいた場合(粘膜下層垂直浸潤距離が 1 mm 以上),あるいは切り取った端に癌があったり,癌が血管やリンパ管に入り込んでいる場合は,リンパ節に転移している可能性が高くなりますので,状況に応じて手術をすることがあります。

Q3 大腸癌の外科治療

手術が必要といわれ,大腸を 20~30 cm 切り取るといわれました。後遺症は大丈夫でしょうか。

A 大腸の長さは 1.5~2 m です。結腸を 20~30 cm 切り取っても,大腸の主な機能である水分の吸収は残った大腸で十分であり,後遺症はほとんどありません。普通の生活に戻ることができます。直腸を切除した場合には,便をためる能力と便を押し出す能力が低下するため,排便の回数が増加したり,1 回の便量が減少したり,残便感などの排便機能障害をきたします。手術後に下痢をしたり排便回数が増えたり,あるいは便が出にくいなどの異常があったとしても,適切な食生活・日常生活に心掛け,必要に応じて医師から薬剤を投与してもらえばコントロールできます。

Q4 リンパ節郭清

大腸の手術のとき,リンパ節も取るといわれました。なぜリンパ節を取るのでしょうか。

A リンパ節は体の中にたくさんある小さな(普通は径 0.4~1.0 cm)臓器で,細菌や癌細胞など体にとって不都合な侵入者を監視しています。首すじやわきの下,足の付け根など,表面に近いリンパ節は自分でさわることもできます。大腸のまわりにもリンパ節はたくさんあります。

 大腸癌が広がる主な道筋はリンパ管と血管(静脈)です。リンパ管に入り込んだ癌細胞はリンパ管を流れて大腸のまわりのリンパ節に流れ込み,そこにひっかかります。そこで多くの癌細胞は体の攻撃により死滅しますが,生き残った癌細胞が増えるとリンパ節転移ができあがります。さらに進むと遠いリンパ節に次々に転移することになります。さらに,胸管という太いリンパ管に入り込み,胸の中を通って太い静脈に合流します。

 ですから,ある程度大腸癌が進行すると,近くのリンパ節には癌細胞が潜んでいる可能性が高くなります。そこで,手術では,癌のある大腸を切り取るだけでなく,その近くのリンパ節を(予防的に)取る手術が行われます。これをリンパ節郭清といいます。たとえリンパ節に転移があっても,リンパ節郭清を行うことによって癌を治すことができるのです。リンパ節郭清の範囲は,大腸癌の進み具合(ステージ)に応じて決めています。

 リンパ節郭清術には高度な技術が必要で,手術中に最も神経を使うところです。でも安心してください。日本の手術技術は世界中で一番進んでいます。

リンパ節を取っても大丈夫ですか。

A リンパ節は体全体に多数分布しています。大腸癌手術で切り取られるリンパ節は,切り取られる大腸の領域から集まってくるリンパ液の検問所の役割をしています。したがって,監視すべき臓器がなくなってしまいますので,その領域のリンパ節をとっても体には影響はありません。

Q5 大腸癌手術の合併症について

大腸癌の手術後にはいろいろな合併症が起こることの説明を受けましたが,よく理解できませんでした。詳しく教えてください。

A 大腸癌に限らずあらゆる手術の術後に,望まない不都合な状況が発生することがあります。これを合併症といいます。お薬の副作用に相当するものです。大腸癌手術は,大腸の切除,リンパ節郭清,吻合(残った腸管をつなぎ合わせること)の 3 つの操作から成り立っています。手術後の合併症には,手術操作と直接関係して発生する外科的合併症(出血,縫合不全など)と,手術操作とは直接関係なく発生する肺炎,心臓病,肝機能障害などの一般的(全身的)合併症とがあります。

 大腸癌の主な外科的合併症には,腸管のつなぎ目から便が漏れる縫合不全,お腹を切ったきず(創)に細菌がつく創感染,食事開始後に発生する腸閉塞などがあります。

 腸管をつなぐ場合,隙間なく縫うのではありません。その隙間を体で作る蛋白質がノリ状に埋めることにより腸管がつながります。腸管がうまくつながらなかった場合(縫合不全),隙間から便が漏れ出て炎症が起こり(腹膜炎),お腹の中に膿の溜まりができ(腹腔内膿瘍),熱が出ます。この場合には,吻合部の口側の腸に人工肛門を造って,便が縫合不全の場所に流れないようにすれば治ります。約 3~4 カ月後に,この一時的に作った人工肛門を閉鎖します。縫合不全は結腸癌手術では約 1.5%に,直腸癌手術では約 5%に合併します。

 手術から回復し,腸管が動くとおならとなってガスが出ますが,いったん動き始めた腸が,食事を開始してしばらくすると動きが悪くなり,お腹が張ってくることがあります。これを腸閉塞といいます。この場合,食事を中止し,腸を安静にすることによりほとんどが治ります。

 また,お腹のキズ(創)に菌がくっついて(汚染・感染),赤くはれて膿が溜まることがあります(創感染)。この場合,縫った糸をはずし,膿を出すと治ります。これは手術の 10~15%に合併します。

 死亡に結びつきかねない重篤な全身合併症として,肺炎と肺塞栓症があります。特にお年寄りの方はもともと呼吸状態があまりよくない場合があり,手術後の痛みなどで呼吸が十分にできなくなったり,痰をうまく出せなかったりして,肺炎を合併することがあります。また,痛みどめを過量に用いると誤燕性肺炎を合併することもあります。肺塞栓症は,手術中に下肢の静脈の中に生じた血液の塊(血栓)が歩行を開始したときに,血管壁から外れ,心臓そして肺へと流れ,肺の細い動脈に詰まって生じます。特に長時間手術や足を低くした体位で行われる直腸癌手術で危険性が高くなります。太い肺動脈に血栓が詰まると突然死することもあります。これ以外にも,麻酔薬の影響,手術前後に投与された薬剤による肝機能障害などが起こることがあります。

 これらの悪い結果は,医療過誤や過失によるものではなく,同じ医師が同じように注意深く手術をしても一定の割合で発生します。当然,病院や医師の経験により合併症の頻度は異なります。また,患者さんの年齢,全身状態,併存する持病(糖尿病,高血圧,心臓疾患,呼吸器疾患,肝臓疾患など)の影響を大きく受けます。これらの合併症により不幸にして命を落とされる方(手術死亡率)も 1%ほどと報告されています。

 心配な方は,担当の先生の実績をお尋ねになるのがよいでしょう。

Q6 肛門括約筋温存

直腸癌で永久人工肛門になるといわれました。なんとか回避する方法はないでしょうか。

A 直腸癌の手術には大きく分けて,直腸癌を切り取ったあとに腸をつなぎ合わせる方法(前方切除術)と人工肛門を造る方法(直腸切断術)があります。

 直腸癌の手術では,再発を防ぐために癌から肛門側へ 2~3 cm 離れた直腸を切ります。切り取る線が肛門にかからなければ,その後,腸管をつなぎあわせます(前方切除術)。通常,器械を用いて吻合したり,肛門から縫ったりします。最近では,かなり肛門に近い直腸癌であっても人工肛門を造らずに,つなぎ合わせる手術が行われています。

 切り取る予定の線が肛門にかかる場合は,つなぎ合わせることができないため,人工肛門になります(直腸切断術)。

 手術前に,なぜ人工肛門が必要なのかを担当医から説明してもらうことが大切です。もし,納得がいかないようであれば,セカンドオピニオンとして他の医師の意見を聞くことをお奨めします。

Q7 人工肛門について

人工肛門とはどういうものでしょうか。

A 人工肛門とは読んで字のごとく人工的に造られた肛門(便の出口)のことです。腸の一部をお腹の壁に出して,そこから便を出すようにしたものです。多くは結腸で造りますが,場合によっては小腸(回腸)で造ることもあります。

 人工肛門には,あとで閉鎖する予定の一時的人工肛門と,直腸癌を切り取った後に造る永久的人工肛門とがあります。一時的人工肛門は,何らかの理由で便が出なくなったときや縫合不全が起こったときに,横行結腸や回腸に造ります。一方,永久的人工肛門は主に S 状結腸を用いて左中腹部に造ります。この場合,手術後に患者さん自身による人工肛門の管理がしやすいように,場所や形(1~2 cm ほど皮膚から突出した形)を工夫します。

人工肛門はどのような管理をするのでしょうか。

A 人工肛門を管理する方法には,人工肛門にフクロを貼って便を集める方法(パウチ法)と,人工肛門からお湯を入れて大腸を洗う方法(洗腸法)があります。パウチ法では,最近のパウチは非常によくなってきたため,便や臭いがが漏れることはありませんが,接着剤でかぶれることがあります。洗腸法では,1 日~2 日に 1 度腸の中を約 1 時間かけて洗います。その後まったく便は出なくなります。どちらの方法にも一長一短がありますので,自分の生活に合った方法を選ぶことが大切です。いずれの方法でも,人工肛門周囲の皮膚炎を起こさないように管理することが重要です。

 また,人工肛門の管理は非常に進歩しています。ストーマ外来で専門の看護師による人工肛門の管理・教育を行っている病院もあります。また,患者会(オストメイト)などで,人工肛門の管理法についてさまざまな取り組みも行われています。

お風呂に入っても大丈夫なのでしょうか。旅行にいって,温泉に入れるのでしょうか。

A 誰でも肛門をもっており,お風呂にも入っています。もちろん,人工肛門の人もお風呂や温泉に入れます。ただし,まれに入浴中に人工肛門から便が出ることもあるため,不透明な肌色のパッチを貼るなどの工夫が必要です。もし,洗腸法(人工肛門から腸を洗浄する方法)を行っていれば便が出ることがないので,そのままお風呂に入っても何の問題もありません。人工肛門の中にお湯が入り込むことはありません。ただし,温泉や銭湯など不特定多数の人が集まる場所では,パッチを貼っておいた方が安心できると思います。

日常生活で困ることがあれば教えてください。

A 人工肛門が自然肛門と違うのは,便の出る場所が腹部になったことと便が漏れないようにしている肛門括約筋がないことです。したがって,下痢になった場合,パウチを頻回に取り替えたり,洗腸法をしていてパウチを貼っていない場合は便が周囲に漏れたりするため,日ごろから食事や生活習慣に注意しなければなりません。パウチの接着剤や皮膚についた便で皮膚炎を起こすことがあります。

Q8 大腸癌の治療成績

大腸癌はどの程度まで治るようになりましたか。また,よくいわれる 5 年生存率とは何ですか。

A 癌の種類によって,どの程度の期間再発がなければ治ったとみなしてよいかは異なります。大腸癌の場合,一般的に治療開始後 5 年間,再発や転移を認めない場合,「その癌が治った」と考えてよいとされています。その理由は,大腸癌では 5 年以上たって再発する人は 1%以下だからです。

 癌の治療成績においてよく「5 年生存率」という言葉が出てきます。「5 年生存率」とは,癌の治療開始から 5 年後に生存している人の割合を示します。この中には 5 年の間に再発した人や再発して抗癌剤や放射線療法を受けている人も含まれています。また,5 年の間に亡くなった人には,癌以外の病気で亡くなった人も含まれます。したがって,「5 年生存率」は癌の進み具合(ステージ)や治療法だけでなく,手術したときの年齢によっても変わります。

 大腸癌のステージ別の 5 年生存率は,ステージIでは 91%,ステージIIでは 81%,ステージIIIでは結腸癌 69%,直腸癌 58%,ステージIVでは 13%です。

Q9 大腸癌の再発とは

癌を全部切り取ったのに,どうして再発が起こるのでしょうか。

A 手術で癌を全部取り切ったと判断しても,少数の癌細胞が体内に残っていることがあります。再発とは,手術後その残っていた癌細胞が少しずつ大きくなって目に見えるようになることです。手術前には X 線検査や CT を行うのですが,それらの検査でもある程度の大きさがないと映らないため,微小な癌細胞は見逃されます。

 再発の頻度は大腸癌のステージによって異なります。ステージIでは 4%,ステージIIでは 13%,ステージIIIでは 30%が再発します。

再発は早期に見つければ治るのでしょうか。

A 再発を早く見つけたからといって,治るとはかぎりません。しかし,手術で切り取った場合治るはずの再発が遅れて発見され,治らなくなることもあります。そこで,手術で癌が完全に取り切れたとしても,再発発見のため一定のスケジュールで検査を行います。一般的には,手術後 3 年間は 3~4 カ月ごとに,4 年以降 5 年目までは 6 カ月ごとに検査を行います。

再発したときの治療法はあるのでしょうか。

A 大腸癌が再発する主な部位は,肝臓と肺です。肝臓に転移した癌の 30~40%には手術が行われています。手術ができない場合は,肝臓に直接抗がん剤を注入したり(肝動注療法),全身化学療法を行います。肺に転移した場合でも全部が取り切れれば,手術を行います。手術ができなければ,全身化学療法を行います。

Q10 大腸癌の化学療法

大腸癌に効く新しい抗がん剤があると聞きました。どのような薬ですか。

A 大腸癌に対する抗がん剤治療(化学療法)は,5-FU(ファイブ・エフ・ユー)とその増強剤であるロイコボリンを組み合わせて投与することが,1990 年代には欧米での標準治療でした。1990 年後半には新薬として,イリノテカン(CPT-11:シー・ピー・ティ・イレブン)とオキサリプラチンが登場し,欧米を中心に治療成績が向上しました。その結果,現在欧米での標準治療は,5-FU とロイコボリンにイリノテカンあるいはオキサリプラチンを用いる方法です。日本では,10 年遅れて 1999 年にロイコボリンが承認され,すでに使用可能であったイリノテカンと併用することができるようになりました。オキサリプラチンは 2005 年 4 月にようやく承認されました。

 新しい治療法の治療効果は高いのですが,副作用が強いため,その対応が必要です。イリノテカンでは,食欲不振,重篤な下痢や骨髄抑制(白血球の減少)があります。オキサリプラチンでは,骨髄抑制に加え神経症状(手足のしびれ,のどのしめつけ感など)があります。

Q11 大腸癌の補助化学療法

手術でとったリンパ節に転移が見つかり,抗がん剤治療を奨められました。効くのでしょうか。副作用も心配です。

A 手術後の再発を抑える目的で行う抗がん剤治療を補助化学療法といいます。ただし,補助化学療法がすべての大腸癌に再発の予防効果があると確認されたわけではありません。ステージIIIの結腸癌において再発の予防効果があるとされています。リンパ節に転移があった場合はステージIIIですから,抗がん剤治療をお奨めします。これはあくまでも予防なので,強力な方法を行う必要はなく,5-FU とロイコボリンを 6 カ月間注射する方法か経口抗がん剤が一般的です。日本の研究では,経口抗がん剤(UFT)が直腸癌のステージIIIの再発予防効果があることが示されました。

Q12 切除不能・再発大腸癌の化学療法

肝臓と肺に転移が出てきて,抗がん剤治療を奨められました。効くのでしょうか。また,どのような副作用が出るのでしょうか。

A まず,肝臓や肺の転移であってもすべてを切り取ることにより,治ることがあります。

 しかしながら,肝臓や肺にいくつもの転移があったり,また,肝臓や肺以外の臓器に転移がある場合は,手術を行いません。この場合,抗がん剤による治療を考えます。ただし,1)少なくとも歩行可能で自分の身の回りのことを行える,2)肝臓や腎臓の機能がしっかりしている,3)転移・再発が X 線検査や CT,MRI などで映し出せる,ことが条件とされています。

 化学療法で大腸癌を治すことはできませんが,一部の人の癌を小さくしたり進行を遅らせたりして,その人の生存期間を延長させる(治療効果がある)ことが示されています。国内で使用可能な方法で,治療効果があることが証明されている方法には,5-FU+ロイコボリン,5-FU+ロイコボリン+オキサリプラチン,5-FU+ロイコボリン+イリノテカンなどがあります。また,転移が肝臓に限局している場合,肝動脈に 5-FU を注入する方法もあります(肝動注療法)。

 抗がん剤は癌細胞だけでなく,正常の細胞にも障害を与えます。このため,抗がん剤による副作用が出てきます。副作用は,患者さん自身が身体で感じるものと採血や診察でわかるものとがあります。副作用の種類や程度は抗がん剤の種類や個人により異なります。たとえば,脱毛は一部の薬に限られており,また,記載されている副作用がすべて出るわけではありません。現在では,副作用を予防する薬の開発もすすみ,特に嘔気・嘔吐に対しては十分な対応ができるようになってきています。抗がん剤治療を受ける場合は,担当医からどのような副作用(種類や時期,期間など)が出るのかの説明をよく聞いて,治療を受けてください。

Q13 腹腔鏡手術

腹腔鏡手術とは何ですか。

A 従来の開腹手術では,お腹を大きく切って直接お腹の中を見ながら手術を行います。一方,腹腔鏡手術では「腹腔鏡」というカメラを使って,お腹の中の状態をテレビ画面で見ながら,数カ所の穴から長い器具を挿入して手術を行います。お腹を大きく切ることがないため,手術のきず(創)が小さく,そのため痛みも少なくて済みます。また,腸の運動の回復が早いなど手術後の回復が全体として早く,結果として入院期間が短くて済みます。

Q14 大腸癌の予防法

大腸癌にならない予防法がありますか。

A 大腸癌は,動物性脂肪の摂取量の多い人がかかりやすいとされています。これは動物性脂肪による細胞分裂促進作用や,動物性タンパクの加熱により生成される発がん物質などによるものと推定されています。また,肥満やアルコールの摂取も,大腸癌になる危険を高めることが示されています。一方,十分な野菜類を食べることや定期的な運動をすることが,大腸癌の発生を抑制することが認められています。しかし,最近,野菜や果物をたくさん食べても大腸癌になる危険性は変わらないとする大規模疫学調査の結果が報告されました(厚生労働省研究班)。しかしながら,胃癌の予防には野菜や果物の摂取が効果的との結果がすでに出ており,研究班では「野菜や果物を食べることは奨励すべき生活習慣であることに変わりはない」としています。その他に,ビタミン D,カルシウム,葉酸などの摂取が大腸癌になる危険を下げるという報告もあります。一方,古くから大腸癌の予防に有用だと考えられていた食物繊維については,最近の研究の結果が一致せず,その効果は確認ができない状況です。また,最近では,アスピリンなどの消炎鎮痛剤が大腸癌を予防すると報告されていますが,現在その効果と安全性に関する検討が行われているところです。

 大腸癌の発生を抑える有効な予防法は現在のところ確立していません。大腸癌を予防するために今できることは,動物性脂肪,赤身肉,貯蔵肉,アルコールの摂取量などを少なくするとともに,食生活に注意して肥満にならないようすることです。すなわち運動などを含めた規則正しい生活とバランスのよい食事を心がけることが大切だといえます。

Q15 大腸癌手術後の生活について

大腸癌手術後の食事のとり方について教えてください。

A 手術直後の経口摂取(食事)は,従来は手術後 4~5 日目に始まる排ガス(おなら)を確認してから始めていましたが,最近では,より早い経口摂取開始が行われるようになりました。また,流動食からの徐々に固形物の量を増やして行く方法は習慣的な要素が大きく,最近は手術後早期から通常の食事を開始する病院も見られます。

 退院後の食生活では,原則として食事に制限はありません。何を食べてもかまわないのですが,手術後間もない間は腸運動が十分に回復していないこともあり,食物繊維の多い食べ物や,消化しにくいものは避けるようにし,規則正しい食事を心がける必要があります。

大腸癌手術後の生活で気をつけることは何ですか。仕事に復帰することはできますか。

A 大腸を切り取ったために栄養吸収や食事摂取量の低下,それらに伴う体重減少などのトラブルはほとんどありません。結腸をほとんど全部切り取った場合は,水分を吸収する能力が減少し,下痢や水様便となることもあります。しかし,多くの場合術後 1~2 カ月でやや軟便の状態となり,日常生活に支障をきたすことはまれです。一方,直腸を切除した場合には,便をためる能力と便を押し出す能力が低下するため,排便の回数が増加したり,1 回の便量が減少したり,残便感などの排便機能障害をきたします。また,大腸切除に限らず,開腹手術すれば常に腸閉塞が起こる可能性はあります。

 社会復帰が可能となる時期は,年齢や体力,社会的状況,仕事内容,手術術式などにより異なりますので,個々の状況に応じて対応すべきです。ひとつの目安としては,退院後の仕事内容が主にデスクワークであれば術後 1 カ月程度で,腹筋をよく使う運動や仕事であれば術後 2~3 カ月くらいを目処に社会復帰が可能と考えます。

Q16 大腸癌手術後のサーベイランス

大腸癌手術後に,定期的に通院して検査が必要といわれました。どのような検査をするのでしょうか。また,いつまで通院する必要があるのでしょうか。

A 手術後のサーベイランス(経過観察)は,早い時期に再発を発見して,その治療を効果的にするために行います。再発の頻度は大腸癌のステージによって異なるので,サーベイランスのスケジュール(通院の間隔)もステージによって異なります。検査の内容は,通常の診察,腫瘍マーカー測定(血液検査の一部で,癌が再発したときに高くなるタンパク質です),胸部 X 線検査,腹部超音波検査,CT,大腸内視鏡検査などです。ときには MRI も行います。通院期間は手術をしてから 5 年が原則です。

Q17 大腸癌の腫瘍マーカー

大腸癌手術後の検査で CEA が高いので,検査をするといわれました。どのような意味なのでしょうか。

A 癌細胞で作られて血液中に放出される物質で,癌の再発診断に用いられるものを腫瘍マーカーといいます。CEA(癌胎児性抗原)もその一つで,大腸癌が再発すると 8 割以上の人で血液中の CEA の値が上昇します。CEA が高くなると,再発を疑って CT などの検査を行い,再発した場所を探して治療をします。ただし,煙草を吸う方や糖尿病,肝臓病の方は,癌の再発がなくても CEA が上がることがあるので注意が必要です。大腸癌では CEA のほかに CA19-9,NCC-ST-439 という腫瘍マーカーを測ることもあります。

Q18 「説明と同意」

大腸癌の治療を始めるにあたって「説明と同意」に署名を求められました。これは必要なことでしょうか。

A 現在はどのような病気でも,医師は患者さんに病気や病状,治療法を説明した上で,患者さんからの同意を得てから治療を行います。治療法によっては強い副作用や事故を伴う危険性があるため,治療を始めるにあたって医師は患者さんにとって不都合な事態について患者さんに理解を求めることが必要です。そのために,医師は病気や治療の内容を口頭と文書で患者さんに説明し,患者さんに治療方法を納得していただきます。その際,治療法について医師と患者さんの間で無用のトラブルが生じないよう覚書をかわす意味で署名をします。治療法に納得がいかなければ,その治療を受ける必要はありません。したがって,その場合は署名をする必要はありません。しかし最も重要なことは医師と患者さんの信頼関係です。

Q19 セカンドオピニオン

大腸癌と診断されましたが,お医者さんによって奨められた治療法が異なります。どうしたらよいでしょうか。

A 大腸癌の標準的な治療法はある程度決められています。しかし,医師の間でも治療法について意見の分かれるところや細かいところで治療の有効性が確認されていないところがあったり,標準的な治療法が定められていないこともあります。また,有効性はまだ確認されていなくとも標準治療より効果的と思われる治療法もあります。そのような場合,一人の医師の考えだけではなく,他の医師の意見をきくこと(セカンドオピニオン)も,ご自分が納得して治療を受ける上で役に立ちます。

ガイドライン以外の治療法を奨められましたが,決心がつきません。

A ガイドラインとは標準治療の基本を記したものです。大腸癌の治療のなかには,標準治療がまだ決まっていないものもあります。また,標準治療よりもさらに効果の高い治療法を目指した臨床試験もあります。病院によっては独自の治療法を開発し,その方法を患者さんに奨めるところもあります。治療法の選択で迷った場合は,他の病院でのセカンドオピニオンを求められるとよいでしょう。肝心なことは治療法を納得して,自ら決心して選ぶことです。

Q20 代替療法

友人に代替療法を奨められました。効果はあるのでしょうか。

A 代替療法は一般的な外科治療,化学療法,放射線療法以外でそれらを補完する治療法です。鍼治療,精神療法,サプリメントなど幅広いものが含まれます。しかし,癌が小さくなったり,なくなったりする効果が科学的に証明されたものはありません。ただ,それを行うことで,精神的な安心感が得られる場合があります。代替療法を受けるか否かについては,主治医と十分相談されることをお奨めします。

Q21 臨床試験

主治医より臨床試験の説明がありましたが,参加しようかどうか迷っています。臨床試験とはどのようなものですか。

A 新しい検査法や治療法が安全で有効であるかを科学的に証明するための研究的な診療を臨床試験といいます。臨床試験では,現在標準治療とされている治療法とより効果的であると考えられる治療法を,医師や患者さんの意思や好みでなく,一定の決まりにより振り分けて治療し,その効果を比較して調べることです。臨床試験は患者さんをはじめとして,多くの専門家が関わって長い年月をかけて行われます。患者さんの意思で治療法を選べないため,参加を躊躇される方もいらっしゃいます。しかし,信頼できる新しい効果的な治療法を開発するには臨床試験が不可欠ですので,患者さんには臨床試験の内容をよく理解していただき,できるだけ参加していただきたいと思います。

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